足りないもの
intro:
これは祈りなのでしょうか、それとも叫びなのでしょうか?
「ねぇ神様、私にベンツを買って。友達はみんな、ポルシェなの」
そんな彼女の声に反応するかの様に私は、マグカップを手に取ると、コーヒーの香りを楽しむ仕草をしてみせます。
まるで、冷静さを装うかのように。
そして、未だ見ぬ彼女に向かって、こう呟きます。
「なあ、ジャニス。君はまだ、孤独のままかい?」
そして私は、ジャニスに代わって祈りをささげます。
「ねぇ神様、私に髪の毛をちょうだい。友達はみんな、フサフサなの」
溜息交じりの向こう側で、作り笑いだけが妙に寂しく感じられます。
でも、なぜだろう?
私がカーテンの隙間から覗く夜空に目配せすると、
「ほんの少しだけだけど、まだ希望が残ってるんじゃない?」
そうジャニスが耳元で呟いてくれた気がします。
今夜、ジャニスの歌声と、そして「希望」という名のほんの少しだけ残った私の髪の毛に、どうか祝福を。
┐(  ̄ー ̄)┌ フッ・・・
main:
私が生まれた次の年、1人の女性がドラッグにまみれたまま遠い向こうの世界へと逝ってしまいました。
彼女の名前は、Janis Joplin(ジャニス・ジョプリン)。
職業は、シンガー。
ジャニスは学生の頃から、周りからずっと疎外されていたそうです。
嫌われ、無視され、「この学校で最も醜い女」の称号まで与えられました。
彼女はシンガーとして名声を得た後、久しぶりに同窓会に出席するために、故郷へと帰ります。
そう、今までに自分を見下してきたやつらを見返すために。
しかし、何も変わりませんでした。
錦を飾るはずだった故郷は、彼女を昔と同じ様に扱っただけです。
「私は、自分の足りないところを埋めるために歌っている」
そう語ったジャニスは、「Mercedes Benz」の中で、こう歌います。
「ねぇ神様、私にベンツを買って。だって友達はみんな、ポルシェなの」
なあ、ジャニス。
ポルシェに乗るような友達が、君にはどれくらいいたんだい?
神様に向かってワガママを言ってるくせに、それでも精一杯背伸びをしている彼女の姿が、愛しく感じられます。
才能とは、他人に比べて突出した部分のことではなく、
自分に欠けた部分、
自分に足りない部分、
それを埋めようとするチカラのこと。
そんなことを、誰かが言っていました。
自分の足りない部分・・・
それは弱さだったり、ズルさだったり、
ルックスが悪かったり、身体に病気や障害を抱えていたり、
空気が読めなかったり、気が利かなかったり、
人それぞれでしょう。
そして、満たされることと、満たされないこと。
そのどちらが幸せなのかと聞かれても、私にはわかりません。
でも、自分の足りない部分をいつまでも誤魔化して生きていれば、いつだって悪いのは自分以外の何かになってしまいます。
上手くいかないのは、いつも誰かのせいで、何かのせい。
そして、そこからは何も生まれません。
キレイゴトの海の底に深く深く沈んでしまうだけです。
だから、そんな自分を丸裸にしてみることって大切です。
自分の弱さ、足りないもの、欠けたもの。
そんな部分に向き合ってみる。
苦しくとも、そこからでしか何かは生まれてきませんし、前に進むこともできません。
ps:
先日、ポール・ポッツ氏が来日しました。
そして一昨日は、辻井伸行氏がヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで、日本人初の優勝を飾りました。
決して恵まれていたとは言えない彼らの歌声や演奏を耳にして、ふとジャニスのことを思い出しました。
足りないものを埋めようとすること。
しかしそれは、髪の毛の足りない私の毛穴には油脂がたっぷり詰まってるんじゃないかと疑うこととは、きっと何かが違っているはずです。
よっしゃ、今日もキマった!
┐(  ̄ー ̄)┌ フッ・・・
post by ノリユキ at 16:00 | コメント・トラックバック(1)


ジャニスの曲は多感な10代20代の頃に聴きました。
沢山は知りませんが、「Mercedes Benz」は好きな曲の一つです。彼女が故郷に帰る映像は、プロモーションビデオか何かで見た記憶がありますが、そういった内容だったとは、今改めて知りました。ジャニスも、ジミヘンも、ブライアン・ジョーンズも確か27歳という若さで亡くなっていますね。Rockは死んで永遠、となるように。当時はそんなものかと思いましたが、今は家族のため、自分のためにお金を稼ぎ生き続けたいと感じます。
コメント by イサオ at 2009.06.10@22:30:44